地域住民としての懸念と要望
斎場の建て替えに際しては、周辺住民の生活環境や安全面への配慮がどれだけなされたのか。これはPFIという方式の是非とは別に、「公共施設が地域とどのように共存するか」という根本的な課題でもあります。
新しい斎場は、確かに外観も美しく、火葬機能も最新化され、環境負荷にも配慮された施設となりました。しかし完成後、敷地内への出入り口は堅牢な門で常時閉鎖され、かつてのように子どもたちが駐車場で自由に遊ぶ姿は見られなくなりました。私が子どもの頃は、その広々としたアスファルトの駐車場が、キャッチボールやローラースケート、ラジコンで遊ぶ貴重な場所でした。今となっては、そうした公共空間としての「開かれた斎場」は完全に失われています。
また、建て替え前から自治会で要望していた「敷地内の遊歩道整備」についても、実現されませんでした。これは、通学路としての安全確保という意味でも重要な提案でした。現在も、子どもたちは登校時に車の抜け道として使われる細い生活道路を通らざるを得ない状況が続いています。斎場敷地内を通り抜けることができれば、車の往来を避けた安全な動線が確保されるにもかかわらず、門は閉ざされたままです。
さらに、旧斎場の時代から課題だった「敷地外での喫煙」も改善されていません。施設内が完全禁煙になった結果、斎場利用者が敷地の外に出て、住宅街の路上や植え込みの陰で喫煙する様子が今でも見受けられます。これは景観や健康面だけでなく、地域住民の安全・安心な生活環境を守るうえでも看過できない問題です。
これらの現状を見る限り、PFI方式によってハード面での整備は進んだものの、地域との対話や「運用面での柔軟な配慮」は必ずしも十分ではなかったのではないかと感じます。特にPFI契約では、計画段階で仕様に盛り込まれていない事項は、原則として実現が困難になります。すなわち、地域の声が反映されるタイミングは非常に限られていたのです。
私たち自治会からの提案が、単なる「わがまま」や「要望の一つ」として処理されてしまったとすれば、それはとても残念なことです。公共施設とは、市民の税金でつくられるものだからこそ、ハードの整備だけでなく、日々の運用においても地域の声に真摯に耳を傾け、共に育てていくものであってほしいと願っています。