PFI方式の概要と効果

今回の斎場再整備事業において豊橋市が採用したのは、PFI(Private Finance Initiative)方式の中でも「BTO方式(Build-Transfer-Operate)」と呼ばれる手法でした。これは、民間事業者が施設を建設(Build)し、完成後に市に所有権を移転(Transfer)したうえで、一定期間その運営・維持管理(Operate)も行うというものです。
市の説明によれば、この方式を採用することで、民間のノウハウや資金力を活用しつつ、長期的に効率的な運営が可能になるとしています。実際、ライフサイクルコストの削減や施設機能の平準化、民間による技術力や創意工夫の導入が期待されることから、他の公共施設でもPFI導入の事例が増えてきているのも事実です。
豊橋市では、PFI事業としてこの斎場整備・運営に関わる事業費を約72億3千万円とし、契約期間は平成30年12月から令和53年3月までの約24年間。この間、施設の維持管理や運営は「PFI豊橋市斎場株式会社」が担っています。市は、従来の方式と比べて約5.8%のコスト削減が可能になるとの試算を示しており、財政的なメリットも強調しています。
しかしながら、地域住民としてこのPFI方式を受け止めたとき、いくつかの疑問や不安も拭いきれません。たとえば、建設から運営までを一体で担うということは、設計段階から運用面に至るまで民間事業者の判断や都合が色濃く反映される可能性があるということでもあります。市民や地域の声は、どのタイミングで、どれだけ実際に反映されたのか?そのプロセスの透明性や説明責任は、いま一度問い直す必要があると感じています。
また、PFI事業では、契約内容に従ってサービスが提供されることになりますが、「契約で定められていないこと」は基本的に実施されない、という制約もあります。たとえば先述した遊歩道の整備や避難所機能の追加といった地域の要望が、事業契約に盛り込まれていなかった場合、それらが柔軟に反映される可能性は低くなります。
市の資料では「モニタリング体制の整備」や「事業者によるサービス水準の維持」が謳われており、形のうえではチェック機能が組み込まれているものの、地域にとっての本当の意味での「共存」が制度設計の中でどれほど重視されていたのかは、現場で暮らす住民として引き続き注視していきたい部分です。