防犯灯の電気代って誰が払うの?自治会・町内会のリアルなお話

防犯灯の電気代って誰が払うの?自治会・町内会のリアルなお話

夜道を歩いていて、ふと見上げると、ポツンと光る防犯灯。そのあかりに「ほっとした」という経験を持つ方は多いのではないでしょうか。とくに住宅街や路地裏など、街路灯が少ない場所では、防犯灯の存在が安心につながります。事故や犯罪を防ぐ役割はもちろん、子どもや高齢者の夜の外出にも欠かせないインフラです。

けれども、この身近な灯りについて「電気代って、誰が払っているんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。なんとなく行政が全部面倒を見てくれているように感じる方もいれば、「自治会がやっているらしい」と耳にしたことがある方もいるでしょう。実際には、自治体が管理する「街路灯」と、自治会や町内会が維持する「防犯灯」とでは大きな違いがあり、後者の多くは住民自身の会費で電気代を賄っています。

とはいえ、自治会や町内会にとって防犯灯の電気代は、決して小さな負担ではありません。世帯数が減った地域や高齢化が進んだ地域では「会費だけではまかなえない」「公平に負担しているのか疑問」といった声も出てきます。実際にトラブルの火種になることも少なくなく、「どうやって維持していくのか」は全国的に共通する課題となっています。

この記事では、防犯灯の電気代をめぐる仕組みや実際の事例、補助制度の活用方法、そしてこれからの解決のヒントについて、リアルな視点でわかりやすく整理していきます。身近な「まちのあかり」の裏側を、一緒に見ていきましょう。

目次

防犯灯と街路灯のちがい

防犯灯と街路灯のちがい

夜道を照らすあかりには、大きく分けて「街路灯」と「防犯灯」の二種類があります。どちらも私たちの暮らしを安全にする役割を果たしていますが、その設置や管理の仕組みはまったく異なります。

まず「街路灯」は、国道や県道、市道といった道路に沿って設置されている公的な照明です。道路管理者である行政が設置し、維持や電気代の負担も市や県が行います。つまり税金でまかなわれており、住民は直接お金を払っていません。大通りや駅前の広い道で見かける明るい照明は、ほとんどがこの街路灯にあたります。

一方で「防犯灯」は、住宅街の細い路地や袋小路、子どもたちの通学路などに設置されることが多いあかりです。こちらは多くのケースで自治会や町内会が設置し、電気代や維持管理の費用を会費から支払っています。規模も小さく、民家の軒先や電柱に取り付けられていることが多いのが特徴です。

この違いを知らないと、「どうして自治会が防犯灯の電気代を?」という疑問が湧いてきます。行政が管理している街路灯と同じように思われがちですが、実際には「地域の安全を住民自身で守る」という発想から、防犯灯は地域の自主的な取り組みとして広がってきました。そのため、電気代や球切れの交換費用まで、自治会の役員や会計担当者が頭を悩ませながらやりくりしているのが現状です。

街路灯と防犯灯の役割の違いを整理してみると、「なぜ自治会が電気代を負担しているのか」という構図が見えてきます。表向きはどちらも「まちを照らすあかり」ですが、裏側には行政と住民との役割分担が存在しているのです。

自治会・町内会が負担している現状

現在、多くの地域で防犯灯の電気代は自治会や町内会の会費から支出されています。自治会費といえば、回覧板やお祭り、広報誌の印刷など、地域の活動に幅広く使われていますが、その中でも「防犯灯の維持費」は大きな割合を占めることが少なくありません。夜間の安心を守るためとはいえ、毎月確実にかかる固定費である電気代は、自治会の家計をじわじわと圧迫しています。

さらに問題となっているのが、会費収入の減少です。都市部では自治会への加入率が低下し、地方では少子高齢化で世帯数そのものが減っているため、集まるお金が年々減っているのが現実です。限られた収入のなかで電気代を工面しなければならず、行事や交流活動の予算を削らざるを得ないケースも出てきています。

また、役員や会計担当者にとっても、防犯灯の管理は頭の痛い仕事です。「電気代を払うのは仕方ないけど、毎月の請求や口座振替の手続きが大変」「球切れの連絡があると、業者に依頼して支払いを調整しなければならない」といった声は各地でよく聞かれます。住民からは「防犯灯が切れて暗い」と苦情が寄せられる一方で、費用や人手の不足からすぐに対応できないという板挟みに悩む役員も多いのです。

こうした負担感は、自治会に加入する住民にとっても無関心ではいられません。「自分はあまり活動に参加していないのに、会費が防犯灯の電気代に消えてしまう」と感じる人もいれば、「入会していない家庭も防犯灯の明かりを使っているのでは?」という不公平感も生まれがちです。結果として、自治会離れが進み、さらに財源が減るという悪循環につながることもあります。

防犯灯の維持は地域の安心・安全に不可欠ですが、その裏では自治会・町内会が大きな負担を背負っているのが現実なのです。

自治体による補助制度や支援

自治体による補助制度や支援

自治会や町内会にとって大きな負担となっている防犯灯の電気代ですが、実は多くの市町村ではその一部を助成する制度が整えられています。とくに電気料金の補助や、防犯灯を省エネ型のLEDに交換する際の費用補助が代表的です。自治会がすべてを自腹でまかなうのではなく、行政がサポートする仕組みを利用できることを知っておくと安心です。

たとえば愛知県豊川市では、防犯灯の設置や電気代の一部を補助する制度が用意されています。愛知県春日井市でも、LED防犯灯に切り替える際の補助があり、省エネ化と自治会の負担軽減を同時に進められるようになっています。大阪府堺市では、電気代そのものを補助する仕組みに加え、球切れ対応や維持管理の相談窓口も設けられており、自治会の実務負担を軽減する工夫がなされています。さらに静岡市では、既存の蛍光灯タイプからLEDへ移行する場合に補助金を交付し、長期的なコスト削減を後押ししています。

こうした補助制度はありがたい存在ですが、利用にはいくつかの条件があります。まず多くの自治体で「申請が必要」であり、決められた期日までに書類を提出しなければなりません。会計担当者や役員が申請手続きを理解していないと、せっかくの制度を活用できないこともあります。また「LED化が対象」「設置から一定年数が経過している場合のみ」といった細かい条件が付けられているケースも少なくありません。

つまり、防犯灯の維持に困ったときには、まず自治体のホームページや担当課に相談し、利用できる補助制度を確認することが大切です。知っているか知らないかで、自治会の負担は大きく変わります。補助金を上手に使うことで、安心のあかりをより長く、より持続的に守ることができるのです。

住民のリアルな声とトラブル事例

防犯灯の電気代をめぐる問題は、単にお金の話にとどまりません。住民の声を拾ってみると、「自分も恩恵を受けているのに、自治会に入っていない人は負担していないのでは?」という不公平感がしばしば話題に上がります。実際、自治会費から電気代を支払っている地域では、未加入世帯も防犯灯の光に守られているわけで、「ただ乗りしているのでは?」という疑念を抱く人も少なくないのです。

一方で、加入している住民の側からも複雑な声が聞かれます。「電気代に会費が使われるのは理解できるけど、他の行事や交流に回す予算が減ってしまう」「会計を任されていると、毎月の請求や補助金申請の手続きに追われて正直つらい」といった悩みは、役員経験者なら共感できるものではないでしょうか。

さらに、ネット上でも防犯灯をめぐるトラブル相談は後を絶ちません。Yahoo!知恵袋などには「自治会に入っていないと防犯灯を利用できないのか?」「自治会を退会したら電気代の負担はどうなるのか?」といった質問が寄せられています。なかには、特定の住民だけが負担を免れていることに不満を持ち、地域内で人間関係がぎくしゃくしてしまったというケースもあります。

また、防犯灯の設置場所をめぐるトラブルもよくある話です。「自宅の前に防犯灯があるのはありがたいけど、明るすぎて眠れない」といった苦情や、「誰の敷地に設置するか」で意見が対立することも。住民全体の安心のために設けられたはずの灯りが、時に不満や摩擦の原因になるのは皮肉なことです。

こうしたリアルな声や事例は、防犯灯の維持が単なる電気代の問題ではなく、地域コミュニティの信頼や公平性と深く関わっていることを示しています。だからこそ、自治会だけで抱え込むのではなく、行政や住民全体での知恵や工夫が求められているのです。

解決の方向性と工夫

防犯灯

防犯灯の電気代をめぐる問題に対して、各地の自治会や町内会ではさまざまな工夫が試みられています。もっとも代表的なのは、防犯灯のLED化です。従来の蛍光灯や水銀灯に比べて消費電力が大幅に少なく、寿命も長いため、電気代と交換費用の両面でコスト削減につながります。最初の設置費用はやや高めですが、自治体による補助金を活用すれば、長期的には大きな節約効果が期待できます。

また、自治会同士で協力し合う取り組みも広がっています。隣接する自治会と合同で防犯灯の維持を管理したり、まとめて補助金を申請したりすることで、手間や費用を軽減する方法です。個々の自治会が小規模になり、会費収入も減っているからこそ、連携によって持続可能性を高める工夫が必要になっています。

さらに、役員の負担を軽くするためのデジタル化も効果的です。会計管理をクラウドで行ったり、LED交換のスケジュールをオンラインで共有したりすることで、「誰がいつ対応するのか」が明確になり、トラブルを減らすことができます。特に若い世代にとっては、デジタル管理の導入が自治会参加のハードルを下げるきっかけになるかもしれません。

もうひとつ大切なのは、「最低限+選択制」という考え方です。防犯灯の維持といった安全に直結する部分は自治会の共通責任として最低限確保しつつ、それ以外の行事や活動は希望者が選んで関わる形にすることで、役員や住民の負担を柔軟に調整できます。これにより、防犯灯を守るための会費は公平に集めつつ、自治会活動への参加のあり方は多様に選べるようになります。

防犯灯の電気代は一見小さな問題に思えますが、その解決には地域の知恵と工夫が欠かせません。LED化、補助金活用、他自治会との連携、デジタル化などを組み合わせることで、安心のあかりを持続的に守っていくことができるのです。

まとめ:まちのあかりをみんなで守るために

夜道を照らす防犯灯は、子どもから高齢者まで、地域の誰もが安心して暮らすために欠かせない存在です。しかしその裏側では、自治会や町内会が電気代をはじめとした維持管理の負担を担い、頭を悩ませている現実があります。「なぜ住民が払うの?」という疑問の背景には、行政が整備する街路灯とは異なる、住民主体の仕組みがあることを理解する必要があるでしょう。

一方で、負担をすべて自治会任せにしてしまえば、加入率の低下や高齢化による役員不足によって、いずれ限界が訪れます。だからこそ、行政の補助制度やLED化の推進、隣接自治会との協力、会計や管理のデジタル化といった工夫が重要です。小さな取り組みの積み重ねが、長期的な安心と持続可能な運営につながっていきます。

また、防犯灯をめぐる議論は「誰が費用を負担するか」という経済的な視点だけでなく、「地域をどう支えていくのか」というコミュニティ全体の課題を映し出しています。未加入世帯との公平性や役員の負担感など、地域の人間関係にかかわる悩みも多いですが、視点を変えれば「防犯灯はみんなで地域を守る象徴」でもあります。

大切なのは、一人や一つの団体が背負い込むのではなく、行政・自治会・住民それぞれが知恵を出し合って負担を分かち合うこと。補助制度を上手に活用し、住民同士で協力し合えば、「電気代の問題」も地域をつなぐ対話のきっかけに変わるかもしれません。

防犯灯のあかりは、単なる電球の光ではなく、「地域みんなで守る安心の灯り」です。その価値を共有しながら、これからもまちを照らし続けていくための工夫を、一歩ずつ積み重ねていきたいものです。

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この記事を書いた人

Katsuyuki Susakiのアバター Katsuyuki Susaki 自治会長・ウェブ屋

当サイトの管理人です。2022年度に組長が回ってくるタイミングで自治会長をやる羽目になりました。500世帯位の自治会で試行錯誤しながら理不尽な要望も聞きながら何とかやっています。そんな僕が自治会長をやって気付いたこと、今後の自治会運営についての考えなどを記事にしています。本業はフリーランスのウェブ屋。1965年製。空いた時間には愛車ヤマハボルトで遊んでいます。

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