自治会・町内会のお祭りへの関りについて

自治会・町内会のお祭りへの関りについて

自治会・町内会を運営している中でトラブルの原因のなるもののひとつに「お祭り」があります。お祭りとひとことで言ってもその意味合いは様々です。特に問題となるのが神社やお寺の関わるお祭り、神輿や山車を巡行させるような宗教的な意味合いも含まれるお祭りです。

自治会と神社、寺院そしてそこで行われるお祭りにはそれぞれに歴史的背景も異なり、また住民の意識もそれぞれ異なります。ですので「こうであるべき」というようなものはありません。しかしインターネット上の様々なトラブルの事例についてみてみると「お金の問題」が特に多いように感じます。実際、私が自治会長をしている自治会においてもお金にまつわる不透明な部分がありました。

目次

不透明なお祭りのお金の流れ

私が自治会長を引き受けた年まで2年間コロナ禍のために秋のお祭りは開催されませんでした。それが2022年度に秋まつりを開催するかどうかの話し合いを春ごろから行われました。お祭りの主体は神社ですがその中の多くの自治会が何らかの形でお祭りにかかわっています。2年間やっていないと前任の自治会長に聞いても何もわからないですしコロナ前の自治会長に聞いても記憶があやふや。非常に気が重くなりました。

当自治会は神社から距離的に離れていることもあり自治会内の集会所に祭壇を作りそこで神事を行い、そこを中心に神輿の巡行を行っています。コロナ前までは1500円程度を半ば強制的に自治会員から徴収しその一部は神社に納めています。残ったお金と神輿会の若い衆が企業やお店を回って集めた協賛金、自治会員からの協賛金などでお祭りを運営しています。

自治会ごとにお金の集め方が違う?

2022年度の秋まつりをどのように行うかの会議で気づいたのは自治会ごとにお金の集め方が異なるという事でした。自治会が代わって協賛金を集めていたり、神輿会などの氏子中心に各家を回って協賛金の協力のお願いに回っていたり実に様々です。当自治会では自治会が代わって自治会内の各家の協賛金を集金し、事業者などには別に神輿会の若い衆が協賛金のお願いに回っています。先に書いたように集まったお金の一部は神社に納めないといけない他、神事は神社とは別に執り行うため割と経費が掛かります。

お祭りのお金の集め方について何が正しいのかはわかりませんが神社や寺院に係るお祭り、宗教的色彩の濃いお祭りについては強制的に集めることは好ましくないとされています。自治会によっては自治会費の一部をお祭りの運営に流用しているところもあり、そのようなことは信教の自由に反することであるため裁判が起こされたケースもあります。そして当自治会も正に好ましくないお金の集め方を行ってきてことが徐々にわかってきました。

鳥栖市自治会神社管理費訴訟判決 2002年
  • 自治会による神社管理費の徴収は信教の自由を侵害し、日本国憲法20条1項前段、2項などに反する違法なものである。
  • 自治会は、強制加入団体とは同視できないとしても、それに準ずる団体である。よって、その運営は、構成員が様々な価値観、信仰を持つことを前提になされなければならない。
  • 神社神道のために区費の支払を余儀なくされることは、自治会への加入及び脱退の自由が大きく制限されているという現状に照らすと、宗教上の行為への参加を強制するものであったと認められる。

お祭りにかかったお金と協賛金の額が違い過ぎる

コロナ禍後、縮小した形ながらも秋まつりを開催する方向で準備を進めることとなりました。何しろ3年ぶりの開催という事で色々と分からないことが多すぎます。特に事務的な部分はなにも引き継がれていないためほぼゼロからのスタートとなる感じです。まずは祭りがおこなわれていたコロナ前の資料をUSBメモリの中から探しました。

ざっくりとした数字ですが毎年お祭りには80万円ほどの費用が掛かっていました。しかし秋まつり前に各家から集めたお金や協賛金を合計しても40万円ほどです。足りない40万円ほどは自治会の会計から支出されていました。

サイト管理人

なにそれ?

正直びっくりしました。自治会の会計報告ではその支出分は行事費、祭礼費として記載されていますがちょっとしっくりいきません。そういえば…と市に提出したある申請書のことが思い出されました。

自治会運営の補助金の申請

それは年度の初めに市に提出した自治会運営の補助金の申請書でした。当自治会の規模ですと年間50万円弱の補助金が市から振り込まれます。様々な市からの配布物の配布代行や調査や回覧などにかかる費用という名目のようですがその申請書を提出する際に事業計画、事業報告、予算書、決算書などを添付します。これらの添付資料の中に宗教的、政治的に関するものを含んではいけないという注意事項があります。

しかし、過去の自治会総会に提出されたこれらの資料には祭礼費として予算にも決算にも計上されています。

サイト管理人

どうしたらいいんだろう?

さらに過去の資料を探してみると当時の市への補助金の申請書の添付資料が見つかりました。その年の自治会総会の決算書と見比べてみると「祭礼費」の分がそっくり「総務費」に付け替えられていました。ちょっとモヤモヤするものがありましたが僕もそのように添付資料を作って補助金の申請を行ったのです。

サイト管理人

まぁ、そういうもんかな…

自治会運営の手引きによれば

当市の自治連合会で作成している自治会運営の手引きによれば、神社祭礼行事について以下のように記述されています。

自治会には、思想、信条を異にする住民が加入していますので、住民への説明なく神社祭礼などに自治会の名前でかかわることは好ましくありません。このことから事業計画や事業報告には祭礼行事(神社、寺院等が関係するもの)を掲載するべきではありません。祭礼行事については、自治会とは独立した別組織である氏子総代などの組織によって執り行われるべきものです。

また予算や決算についても同様に以下のような記述があります。

町自治会活動費と祭礼行事に関する経費とは厳格に会計を分けるべきであり、祭礼行事に関する経費は氏子総代などの組織が自治会費とは別に集め、支出することが適切です。

この自治会運営の手引きによれば当自治会は全く持ってこの手引きにのっとっていないという事が明らかとなりました。市への自治会活動の補助金申請も祭りに支出していることを隠して申請しているので将来問題となる可能性も大いにあります。

祭り実行委員会を立ち上げ

自治会内で行われている秋まつり、神輿を巡行したり、神事を執り行ったり、自治会内から集めた協賛金の一部を神社に納めたりと宗教色の濃いものですが、毎年80万円ぐらい使われている祭りの運営に係る費用のうち40万円が自治会の予算から使われていることが判明。これはさすがにマズいのでは?という事を自治会の会議の議題にしてみました。

ほとんどの組長さんは関心が無いというかどうでもいいという顔をしています。「それは問題だよね」と、同意してくれる人もいますが祭りに割と積極的にかかわっている人は…

「これまでそうやってきたんだから良いだろう?」
「じゃあ、どうやってお金集めるんだよ?」
「他の自治会だってやってることだろう?」

というような意見を出します。もちろんほかの自治会の会長さんにもどのようにしているか尋ねました。自治会費から祭りの費用を出しているところもありましたがそれは少数派。先に書いた「自治会運営の手引き」は定期的に内容が見直されているため、もしかするとかつてはそのようなことは記載されていなかったかもしれません。

ですが現在の「自治会運営の手引き」には「自治会活動費と祭礼行事に関する経費とは厳格に会計を分けるべき」と書かれているのでその内容に沿うように努めなければなりません。

祭り実行委員会設立

500世帯ほどの自治会です。自治会と祭りの運営主体を厳密に分けると言っても自治会内の行事にかかわっている人は限られているのでそれはなかなか難しいものです。僕自身も自治会長ですが神輿会の会員です。ですが、せめてお金の問題については厳密に分けましょう。という事になりました。

そこで「祭り実行委員会」を設立し祭り運営の主体をこの実行委員会が行うという事を明確にしました。お祭りの初穂料や協賛金として自治会員から集金するのは組長さんが行いますがそのお金は自治会会計には一切入れないようにしました。当然、自治会費から祭り、特に神事に係るものについては一切出費しないという事としました。一部、子供たちにお菓子を配ったり、シルバークラブや子供会の方が子供向けに運営してくれる模擬店の費用については自治会から一部協賛するという事は組長会に諮り、可能とすることとしました。

2022年度は祭りの開催は縮小開催という事でしたのであまり費用も掛からず、一軒当たり1000円で約400軒からのご協賛で運営できました。2023年度は一口1000円で複数口での協賛のお願いをしたところ現在のところ総額で60万円ぐらい集まっています。何とか祭りの運営は出来そうですね。

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この記事を書いた人

k2yukiのアバター k2yuki 自治会長・ウェブ屋

当サイトの管理人です。2022年度に組長が回ってくるタイミングで自治会長をやる羽目になりました。500世帯位の自治会で試行錯誤しながら理不尽な要望も聞きながら何とかやっています。そんな僕が自治会長をやって気付いたこと、今後の自治会運営についての考えなどを記事にしています。本業はフリーランスのウェブ屋。1965年製。空いた時間には愛車ヤマハボルトで遊んでいます。

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