2022年度から2年間、自治会長をやりました。この投稿を書いている時点で間もなくその任期が終わろうとしているタイミングです。僕が会長を務めた自治会は世帯数が500世帯ほど。自治会は4つのブロック、40の組で構成されています。自治会長は本来ブロックごとの輪番制で任期は1年です。僕が組長をやるタイミングで前年度の自治会長と自治会内の団体「住みよい町づくりの会」の会長に懇願され引き受けることとなりました。本来はは別のブロックの方から選出するはずだったのですが、どうにも決まらないという事で仕方なく引き受けました。
自治会・町内会の問題点
自治会長になってみて分かったことがいくつもあります。様々な問題点も見えてきました。これらを改善していかないと自治会活動の継続も難しくなるのではないかと感じています。近年では「自治会不要論」「町内会不要論」も活発で自治会や町内会の存在意義も問われています。僕、個人としては「自治会活動や町内会活動にはあんまり関わりあいたくないけど、自治会や町内会がないのも困るだろうなぁ」とまことに身勝手な立場でいました。おそらく多くの方がそんな立場ではないでしょうか?
自治会や町内会というのは都会と田舎、地域性、慣習、歴史など状況が異なればその在り方も全く異なります。一般的には田舎の方が割と密な関係の自治会や町内会運営を行っていて、都会では自治会や町内会があるのも知らないというような薄い関係なのではないでしょうか?これら自治会や町内会毎に異なる状況も踏まえて「自治会や町内会の問題点」について考えてみます。
自治会・町内会とは
そもそも自治会や町内会はどのような団体で何をしているのでしょうか?総務省のサイトにある資料によれば、自治会・町内会とは以下のように説明されています。
- 町又は字の区域その他市町村内の一定 の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体。
- 区域の住民相互の連絡、環境の整備、集会施設の維持管理等、良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行っている。
- 全国で298,700の自治会・町内会等が存在している。(平成25年4月1日現在の総務省調べ)
そして、自治会・町内会の主な活動としては以下のように説明されています。
- 地域の行事に関すること
- 文化活動
- 慶弔に関すること
- 防災・防火活動
- 社会福祉活動
- 行政機関への要望
と、このように説明されていますが実際にはそれぞれの自治会や町内会で活動内容は大きく異なってくるでしょう。「地域の行事に関すること」とひとことで言っても「毎月のように何らかの行事」がある自治会や町内会があれば「年に一回お祭りがあるだけ」というところもあるでしょう。自治会や町内会によって全く異なる活動内容。運営方法ですが共通して問題として挙がってくる点は次のようなものではないでしょうか?
- 自治会費・町内会費の問題
- 役員のなり手の問題
- 加入・退会の問題
- まつり・行事の問題
- 防災・安全活動の問題
これらの問題はほとんどの自治会や町内会で問題点として取り上げられるのではないでしょうか?ひとつひとつ考えてみましょう。
自治会費・町内会費の問題
あなたがお住まいの地域の自治会費、町内会費はいくらでしょうか?地域や自治会、町内会の規模によって大きく異なると思いますが、8割を超える自治会や町内会が年間の会費は10,000円以下のようです。つまり月額数百円以下という事になります。しかし中には年間数万円という自治会や町内会も存在するようで驚きですね。
ちなみに僕が会長を務めている自治会は月額500円、年間6,000円の会費です。問題はこの会費を何に使っているのかという点です。年間数千円の会費の自治会や町内会であれば行事やお祭りで子供たちにお菓子配ったり、敬老の日に煎餅セット配ったり、防犯灯の電気代、街頭消火器の維持費、集会場や公民館の維持管理費でほぼ消えてしまいます。
しかし、年間数万円の会費を集めている自治会や町内会は何にお金を使っているのでしょうか?新しくその地域に引っ越してきた方にはとても疑問に感じるでしょう。そのような自治会や町内会はちゃんとした会計報告、決算報告を行っていない可能性も高いのが現実のようです。
自治体からの補助金
自治会を運営していると自治体から様々な補助金があります。防犯灯や街頭消火器など現状に応じて半額程度が補助されるものと広報や回覧の手数料として支払われる活動補助金があります。僕が会長を務める自治会では年間50万円弱の活動補助金があります。この活動補助金については知らない方が多いのですが、当自治会ではこの補助金の範囲内で1年間自治会長をはじめとする役員や委員、組長に活動費として支払われてきました。しかしながらこの活動費の内訳を誰も知らず、組長が4,000円、自治会長は68,000円と大きく開きがありました。
自治会長、もらい過ぎじゃね?
自治会長になってすぐこのことに気付いたのですが、率直に自治会長の活動費が高すぎるように感じました。そしてそのことを組長会議での議案として活動費を減らすことを提案しました。しかし、組長さんたちからは…
そんなことしたら自治会長のなり手が無くなるでしょう?
頼みますからそこは変えないでください。
と、そんな声が相次ぎました。しかし僕は活動費の金額が明記されていないのはおかしいと役職に応じた活動費を書面にして自治会規約に追加しました。ただ、1年間自治会長をやって分かったことですが…お祭りだの何だのの「祝儀」やビールや酒の奉納でポケットマネーで出さなくてはいけないことも多く、まあ仕方ないかと思うことにしました。
役員のなり手の問題
どこの自治会や町内会でも「なり手がいない」という問題を抱えています。一方で
今年もまたあの人が会長なの?
もう何年やってるのかしら?
というようなケースもあります。なり手がいないことの結果ともいえますが同じ人ばかり何年も自治会長や町内会長というのは様々な問題に発展するケースもあります。よく言われるのがお金の使い方の問題です。自治会長や町内会長の一存で割と高価なものを購入してしまうケースはよく耳にします。
かなり前の自治会長が「僕の一存で」と組長会議で了承も得ずに卓球台を2台購入し、卓球クラブを作ったことがありましたw
最悪の場合、自治会費の流用などの事件に発展してしまうようなケースもあるでしょう。
加入・退会の問題
自治会や町内会は任意の団体です。ですからその地域に住んでいるからと言って加入を強制できるものでもありませんし退会を希望される方を無理やり引き留めることも出来ません。実際、僕が自治会長を務めた2年間の間に何件かの退会の希望の話を聞きました。まぁ同程度の新規加入の方がいるので総会員数はほとんど変化はありませんが。
退会の理由のほぼすべてが「組長をやりたくない」
自治会や町内会を退会したいという方の話を聞けば「自治会費が負担」という方はいませんでした。1ヶ月の会費が500円の自治会ですからそれが負担という方はあまり考えられません。「仕事が忙しい」とか「足腰が弱い」とか「小さい子がいる」とか色々と理由を言われますが早い話「組長をやりたくない」という理由です。それはとても理解できます。今回、自治会長を2年務めた僕ですら次また組長の当番が回ってきたら「面倒臭いなぁ」と思うと自信を持って言えますもんw
このあたりは地域や自治会や町内会の規模によっても異なると思いますが…
組長やらなくていいならもう少し自治会費払ってもいいわよ。
という会員の方もいるので将来的には例えば年間プラス2,000円くらいで「組長免除会員」みたいな制度を作ってもいいのかな?なんて考えたりします。
まつり・行事の問題
自治会や町内会で行われる行事やまつりの運営も役員にとっては負担です。まつりの場合は神社や寺が関わると宗教的な行事と考えられ自治会が主体となって運営することは好ましくありません。まつり運営の費用についても同様の問題をはらんでいます。実際、僕が会長を引き受ける前の年度までは秋の例大祭に自治会費から50万円程度が支出されていました。しかし先に書いた「自治体からの補助金」を申請する際に事業計画や収支報告を添付するのですが自治会の会計から「宗教色のある行事」への支出は認められていません。
そこで補助金の申請の際は祭りへの支出を「雑費」として付け替えるという事をしていました。
おかしくね?
という事で、自治会費からは宗教色のある支出は認めないことにしました。それでも祭りには費用が掛かるものです。そこで「まつり実行委員会」を組織しその実行委員会で自治会員から寄付を募るという形としました。ただし寄付だけではどうしても不足分が出ますので「子供たちに配るお菓子代」「準備の弁当代」など宗教色のない部分について自治会から組長会の承認のうえ、30万円程度の支出をしました。これで補助金申請の時にも正々堂々としてられます。
現在でも地方都市や田舎の自治会や町内会ではまつりや神事の費用を自治会費、町内会費から支出しているところもあると聞きます。実際「信教の自由」に反すると訴訟に発展したケースのあります。
防災・安全活動の問題
自治会では児童の登下校時の見守り活動をしたり、夜の防犯パトロールをしているところもあります。僕が会長を務める自治会でも「住みよい町づくりの会」が中心となり組長さんにも協力をいただきながら活動しています。また集会場(公民館)の防災備蓄品を順次揃えています。もちろん自治体でも災害時のための備蓄はある程度備えているようですが市の中心部から離れている地域ですので対応が遅れる可能性はあります。ですから自治会でも出来ることはしておこうと備えています。
当然これらの活動や備蓄にかかる費用は自治会費から支出しています。災害時に自治会員ではない人を避難所に入れないとか食料を提供しないなんてことはしませんが「モヤモヤする」という人が出てきてもおかしくないでしょう。
自治会不要論・町内会不要論って?
近年、色々な所で耳にする「自治会不要論」「町内会不要論」ですが、自治会長をやってみると…
やっぱ自治会や町内会が無いと困るよ
と痛感させられます。「自治会不要論」「町内会不要論」の意見をSNSなどで発信している意見を見ると根底には「組長がめんどくさい」「役員やらされるのがイヤ」があるように思います。ある地域に住んでいる以上その同じ地域に住んでいる人たちと助け合ったり協力し合わないといけないことがあるのは2024年元旦に発生した能登半島地震の被災地の状況を見ても明らかです。自治会や町内会が無いと誰が被災しているのかもわからないかもしれません。
昭和の自治会・町内会から生まれ変わることが必要
自治会や町内会が必要と言ってもやはり体質や運営方法が古いことも事実です。昔の自治会長や役員が威張ったりするケースもあります(経験済みw)。組長や班長、役員の仕事や役割もいまの令和の時代に合ったものに変えていく必要があります。ただ、今の日本国内、皆が余裕やゆとりがなく毎日の時間や仕事に追われて生活しています。自治会や町内会の活動を変えていくのもなかなか難しいのかもしれません。
それでもやっぱり自治会は必要だと思う。
というのが2年間、自治会長を務めてみて分かったこと、感じたことです。