2年ほど前に自治会長になったのですが当時は自治会のことなんてさっぱりわかりません。インターネットで色々と自治会や町内会の運営方法やトラブルへの対処方法について検索しました。検索結果としてヒットする情報は大きく分けて2種類。ひとつは市区町村など行政機関のウェブサイトで「自治会、町内会に加入しましょう」的な情報。そしてもうひとつは掲示板的なサイトのもので「自治会なんていらない」とか「町内会退会した」と言った自治会や町内会に対して否定的でやや感情的に書き込まれているものです。
いずれも町内会や自治会の実態を表しているとは思うのですが、自治会長、町内会の役員として会の運営についてあまり参考になる情報ではありません。そういうときはやはり「本」ということになるのかもしれません。特に様々な自治会や町内会の現場を見てきた方の情報は役に立つかと思います。今回紹介するのは地域活性化コンサルタント水津陽子氏の「トラブル解消、上手に運営!自治会・町内会お悩み解決実践ブック」です。
自治会・町内会の役員になった人、必読!らしい
僕が自治会長になって初めて疑問に思ったのは「お金の使い道」の問題です。僕が会長を務めた自治会の会員世帯数は約500世帯。会費は年間6,000円。ただし75歳以上のみの世帯は5,000円です。会費で集まるお金は大体250万円です。その他の収入としては市からの補助金~活動費や街灯電気代の補助金、街頭消火器の補助金など60万円くらいがあります。
自治会費 | 250万円 |
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市からの補助金 | 60万円 |
合計 | 310万円 |
自治会、町内会のお金の使い道
僕が2年間自治会長を務めた自治会では上記のように収入は300万円ちょっとです。では支出はどのようになっているのでしょうか?まずは校区自治会への上納金が100万円。役員や組長への活動費・役員報酬が40万円ちょっと。その他が実際の自治会の活動に使われます。
校区自治会へ | 100万円 |
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役員・組長への活動費・報酬 | 40万円 |
自治会の活動に使われるお金 | 170万円 |
合計 | 310万円 |
校区自治会への支出は適切なのか?
自治会費として集められたお金の3分の1を校区自治会へ支払っています。これはかなり大きな金額となります。校区自治会の会計報告では夏祭りや体育祭、防災訓練、成人式、学校の備品購入などに使われていますがコロナ禍でほとんどの行事が中止または縮小開催となっています。当然、予算も余っています。
校区体育祭など半ば強制的に参加させられる行事は廃止の方向で良いと思いますし、学校の備品の購入などは自治会で負担するものなの?というものも見受けられます。校区自治会の活動の中心が小学校であることも多いため「自治会で使うものを買うけど、小学校も使っていいからね」という考え方なのでしょうけど、ちょっとモヤモヤします。
自治会の役員・組長の活動費・報酬は適切か?
僕が2年前に自治会長を務めたのは「組長」の役が回ってくるタイミングでお願いされたからなのですが、その前に組長が回ってきた10年ちょっと前までは役員報酬や組長への報酬のようなものはほとんどありませんでした。しかしその年の自治会長が「私の一存で…」と自治会役員の報酬と組長への活動費の大幅な増額が決められ、それ以降続けられています。しかもその金額が規約等どこにも書かれておらず会計のメモ的な書類に記載されているだけです。
このようなお金にまつわる不透明な部分はどこの自治会、町内会にも共通した問題でこの本においてもトラブルの事例が紹介されています。
目次から抜粋
トラブル解消、上手に運営!自治会・町内会お悩み解決実践ブック
- 役員の飲食や資金流用など、お金にまつわるトラブル
- 会費に含まれる神社費用のトラブル
- 赤い羽根や歳末助け合い、募金の徴収トラブル
- 違法な献金や届け物など、政治家にまつわるトラブル
この本で紹介されている事例を読むと「うちの自治会はまだマシなのかなぁ」と感じてしまうようなものもありますが全国各地、様々な自治会や町内会のトラブルがあるのがよく分かります。2年間の自治会長を経験した後であればある程度想像がついたり想定できる事例もありますが、この本は自治会長になってすぐに購入したため割と参考になりました。
今年度初めて自治会長、町内会長、自治会や町内会の役員をやることになった方にはおススメできる本ですよ。自治会や町内会の現状というものがざっくりと分かります。
自治会や町内会のトラブルやお悩みへの解決の指針も
様々なトラブルや問題を抱える自治会や町内会ですが今このページをご覧のあなたは「自治会や町内会が不要だ」とは考えておられないと思います。それどころか自治会や町内会をどのようにまとめて行こうか?より良い組織にしていこうか?と考えているのではないかと思います。
特に今年度初めて自治会や町内会の役員、会長になったという方は不安で仕方ないでしょう。2年前の僕もそうでした。そんな僕が当時手にした本の一冊です。
自治会や町内会の運営というのは地域差もその地域の中でも隣の町内とは全く異なったりします。
実際僕も同じ市内の他の自治会長、町内会長と知り合いになって意見交換したりしましたが、驚くほど異なります。自治会や町内会の運営には模範解答は無いと思いますが様々な事例から学べることは多いはずです。他の自治会や町内会の良いところはどんどん取り入れて現状、トラブルやお悩みの多い自治会や町内会をより良い方向にもっていくと良いですね。
また、自治会や町内会というのは「前年踏襲」による組織運営というのが良く見られます。僕が会長を務めた自治会でもそうでした。
去年もこうやったんだから今年も同じようにしよう。
それにストップをかけてくれたのが「コロナ禍」だと言えます。僕が自治会長を引き受けたときにはほとんどの行事は行われておらず、行事についての引継ぎなど皆無でした。そうなると自治会の行事や運営などはいちから構築し直す必要があります。だれも望んでいないのに毎年ただただ続けてきた行事を廃止することが出来るチャンスです。
目次から抜粋
トラブル解消、上手に運営!自治会・町内会お悩み解決実践ブック
- 時代は次の御代なのに自治会・町内会は昭和のまま?
- これからの自治会・町内会2つの転換
- 開かれた自治会・町内会の運営の見直しポイント
- 対策編1、加入率をアップするには
- 対策編2、新たな人や若者の参加を呼び込むには
やはりもっとも参考になるのは実例
「自治会 運営」とか「町内会 活動」のような検索をしても市町村などの自治体の「自治会に参加しましょう」「町内会に加入しましょう」的なウェブサイトばかりヒットします。なかなか自治会や町内会の役員向けの情報というのはありません。町内会や自治会の運営事例として総務省のウェブサイトにこのような資料がありますがあまり役に立ちそうにありません。
もう少し具体的な事例を知りたいところですが、いかにもお役所的というか「まとめました!」みたいな感じでちょっと残念です。この本ではもう少しちゃんと現場を見てきたという感じのレポートになっており参考になります。ただ、事例が4例のみなのでもっと色々と見たいところですね。
目次から抜粋
トラブル解消、上手に運営!自治会・町内会お悩み解決実践ブック
- 目指すのは「ご近所力」を強力にすること!
海風の街自治会(千葉県浦安市)- 新たな参加を呼び込む、新会長の挑戦
須賀町町会(東京都新宿区)- 道に愛称、絆を結び、花が開いた!
美晴台自治会の活動(横浜市港南区)- ITを駆使!連絡を迅速化、負担軽減
白根相友自治会(横浜市)
開かれた自治会や町内会運営の重要性
自治会や町内会の中にはきちんとした規約も作成されていないようなところもあるようです。そのような自治会や町内会は同じような人が何年にもわたって会長をやっていたりして自治会や町内会運営の内情が不透明な所も見受けられるようです。
僕が会長を務めた自治会では1年または2年で会長が交替するため規約等もちゃんとありますし会計報告や監査報告も組長会議で説明し回覧もしています。しかし同じ校区の別の自治会では何年も自治会長が変わっていなかったり組長会議もあまり開かれていなかったりするところもあるようです。
たしかに自治会長、町内会長を何年もやってくれるのは住民にとっては助かるのかもしれません。しかしその人が永遠に会長をできるわけでもありません。自治会、町内会組織そのものが形骸化してしまい新しい風が入ってくることも無いでしょう。そして風通しの悪い自治会や町内会は新規会員が入ることも無く、退会する世帯ばかり増えて立ち行かなくなる気がします。
昭和のころは特に規約など決めなくても常に隣近所の顔が見える社会であったため、それでもよかったのかもしれません。しかし令和の現在、何事においても決めごとがあってオープンにしている必要があります。この本で紹介されている自治会や町内会運営における基礎的な事柄はしっかり押さえておきたいものです。
目次から抜粋
トラブル解消、上手に運営!自治会・町内会お悩み解決実践ブック
- 会の憲法「規約について」
- 自治会・町内会の役員について
- 総会について
- 個人情報の取扱について
- 会計について
- 監査について