また、自治会費の私的流用の事件がニュースになっていました。このようなニュースが定期的に流れるから自治会や町内会の組織運営が怪しがられるのだと思います。しかし、ほとんどの自治会や町内会は年度ごとに決算報告が行われていて監査もしっかり行われています。何故このような自治会費や町内会費の横領や着服、私的流用の事件が起きてしまうのか?考えてみたいと思います。
自治会費、町内会費の横領、着服、私的流用事件の事例
雲南市議が自治会会費の私的流用で辞職
2024年5月1日の報道です。島根県雲南市の市議会議員が自治会の会費270万円を私的流用していたという事で議員辞職したという事です。自治会の会計担当で流用していたようですが監査で私的流用が発覚したそうです。実にお粗末な事件です。
奈良県斑鳩町の町議会議員が自治会費数百万円を私的流用
2023年10月3日の報道です。奈良県斑鳩町の町議会議員が自治会の会費数百万円を私的流用していたという事です。自治会の会計責任者をしていたという事で議員辞職しました。
滋賀県長浜市で自治会口座から2680万円を横領
2023年10月3日の報道です。滋賀県長浜市で自治会の会計から2680万円が無くなっていたことがわかりました。地区に住む元市議会議員や会計責任者が自治会の口座から現金を引き出していた疑いがあるとのことです。
自治会費241万円横領の疑いで元伊賀市職員逮捕
2023年7月23日の報道です。伊賀市教育委員会の職員が会計業務を手伝っていた住民自治協議会の口座から現金を横領したとしてその職員を逮捕したとのことです。
神奈川県横浜市で1000万円超の自治会費の横領
2018年11月16日の報道です。神奈川県横浜市の市営住宅で住民が支払う共益費や自治会費の一部が横領された疑いがあることが分かりました。長年会計を担当していた人物が積立金を横領したとのことです。会計監査もその人物の知り合いがやっていて発覚が遅れたようです。
和歌山市の自治会の元会長が自治会費約3600万円を流用
2015年01月26日の報道です。平成14年から平成26年の長期にわたって当時の自治会長が不適切な会計運用を行い毎年200万円ほどの不正があり総額で3600万円もの私的流用していたという事です。
このようにちょっと過去の記事を検索しただけでも色々と出てきます。横領や着服された金額も数十万円と比較的少額の事案から過去には6000万円なんて言う記事も見かけました。数十万円ならわかる気がするのですが、1000万円以上となるとどうして発覚が遅れたのかが不思議でなりません。
自治会や町内会の口座に大金があることが問題なのか?
そもそもの問題として自治会や町内会の口座に1000万円を超える大金があることが問題の根源ではないのかと思う方も多いと思います。しかしそれは自治会や町内会の有りようによっても異なります。例えば市営住宅のようなところの自治会では市営住宅建設時に自治会館的な部屋や施設が用意されているでしょう。しかし、地方では公民館や自治会集会場を自分たちで建設しているところも多いです。
そんなに自治会の口座にお金があるなら自治会費を安くしてほしいわ。
僕が自治会長を務めてきた自治会も集会場を自治会費をもとに建築しています。すでに築30年を超えており修復も必要な部分も出てきています。30年前の集会場建設時には自治会費の積立金が1000万円ほどありました。しかし、いざ集会場を建設しようと市の補助金を合わせても建設費が1000万円ほど足りません。そこで当時の自治会役員の方たちと有志で自治会の会員の方たちから寄付を募り不足分を補ったそうです。
現在、当自治会の口座には400万円弱の預金がありますが、将来の集会場の建て替えを考慮に入れると少し計画的に預金を増やしていく必要があると考えています。となると1000万円を超える預金が自治会や町内会の口座にあることはそれほど問題ではないと思います。
自治会や町内会の銀行口座に多額の預金があることには理由があります。その理由が合理的なものなのかを考えてみましょう。
- 公民館・集会場の建設費の積み立て
- 防災備蓄品等の購入他、高額な支出の準備金
自治会費、町内会費の私的流用や着服はもちろん罪
自治会費や町内会費を使いこんでしまったり私的流用したりすることは当然、刑事事件として成立する可能性があります。仮に自治会長や会計責任者のように自治会運営の業務にあたっている人が自治会費や町内会費を使いこんでしまえば「業務上横領罪」。また、あまりないケースかもしれませんが使い込んだ人が自治会費を管理する立場になければ「窃盗罪」。また、自治会の何らかの費用を集金すると言って実際にはない集金をして使い込んでしまえば「詐欺罪」にあたる可能性もあります。
一部の人に自治会や町内会の業務を押し付けていることも問題
一方で自治会や町内会のお金に手を付けてしまう人の心境はどうなのでしょうか?ある記事では自治会費を私的流用した人物が動機として「何でもかんでも自治会長に仕事を押し付けてくるので腹いせにやった」と言っています。もちろん自治会費や町内会費に手を付けることはいけませんし犯罪であることは当然です。
自治会長経験者としてはちょっとわかるw
自治会や町内会によっても違うと思いますが自治会長、町内会長の業務は本当に多いです。自治会役員名簿に電話番号を載せているものだから何かというと携帯が鳴ります。こちらが仕事だろうと、そろそろ寝る時間だろうとお構いなしです。それも割とどうでもいい内容の電話です。
僕が会長を務めた自治会では自治会長の活動報酬が年間で68,000円支払われます。
そんだけ貰うならいいじゃん。
と思われる方もいるかもしれません。しかしお祭りの祝儀、ビールや酒の差し入れ等で50,000円くらいは持ち出しです。宗教活動と自治会活動は切り分けるべきなので本来関わらなくてもいいのかもしれませんが、やはりそういうわけにもいきません。だからと言って祭りの祝儀や酒代を自治会費から出すことも出来ません。結局、すべて自治会長の持ち出しです。
2年間自治会長を務めましたが年間68,000円ではとても割に合いません。10倍の68万円でも仕事としては請け負いたくありません。あくまでも全くのボランティアとして関わるから出来ることなのです。それなのに「あれもやれ」「これも自治会長の仕事だ」なんてなると中には破れかぶれになって自治会費や町内会費に手を付けてしまう人が出てきてもおかしくないとは思います。
自治会費、町内会費の私的流用、着服、使い込みを無くすためには
自治会費、町内会費の私的流用や着服、使い込みなどの問題を無くすためには「情報公開」しかありません。年に1回は総会を開催して事業報告、会計報告、監査報告を徹底して行うことです。そしてその内容は回覧してすべての自治会員に周知させることが重要です。
上に紹介した自治会費や町内会費の私的流用事件の多くは何年も同じ人が自治会長や会計に携わっていたり監査もきちんと行われてこなかったことによるものです。何年も自治会長や町内会長、会計担当を務めるというのは並大抵のことではできません。何かのきっかけで魔がさしてしまうことがあるかもしれません。
自治会長や町内会長、会計担当なんてやりたくてやり始めた人なんてほとんどいません。そして同じ人が何年も会長や会計をやるというのは単に「他の人がやってくれない」だけです。
何年も会長や会計を引き受けてしまう人は基本的に人が良くて他の人に頼めないんです。大変な行なのを肌で分かっているから…
自治会や町内会はみんなで関わることが大切
自治会や町内会のトラブルは様々ありますが、やはりお金の問題は重大問題になることが多いです。自治会費や町内会費に手を付けてしまう人がもし本当に犯罪に手を染めがちな人…というか常に悪だくみをしそうな人ならそもそも自治会長や町内会長なんて引き受けないでしょうし推薦もされないでしょう。大体、犯罪を犯そうとたくらむ人が自治会や町内会なんて面倒臭いところで犯罪を犯しません。
たまたま頼まれて自治会長や町内会長、会計担当になって自分の時間を大きく割いてほとんどボランティアで作業や業務を行う日々。なのに自分勝手な要求や要望をしてくる会員…「なんなん?」と思うことも多々あると思います。僕も2年間の自治会長を務めてる間に「何でこんなこと言われながら自治会長やらんといかんの?」何度も思いました。
幸い自治会長は会計とは全く切り離されているので僕が自治会費に手を付けるようなことはありませんでしたがww
自治会費や町内会費を私的流用してしまう。着服してしまう。紛れもなく犯罪行為です。しかしながらせっかく自治会の面倒臭い業務を引き受けてくれた人が犯罪に手を染めてしまうなんて悲しいことはあってはならないことです。自治会費、町内会費の私的流用事件は後を絶ちませんが、とりあえず今自分が関わっている自治会、町内会でそんな悲しい事件が起きないように一人一人が自治会や町内会活動に積極的に関わっていくことが必要なのではないかと考えます。
自治会費や町内会費の着服、私的流用事件の原因は一部の人に会長や会計を任せきりにしているところにあります。いろんな人が自治会業務、町内会活動に関わることで会長、会計、役員の負担が軽減されます。そしてそのことが結果としてこのような犯罪の防止につながるでしょう。