このページをご覧の方はおそらく今現在「自治会や町内会に入ったほうがいいのかしら?」と悩んでいらっしゃる方と思います。タイミングとしては結婚して転居した地で「自治会に加入しませんか?」と誘われたり、家を新築して住み始めた地で「町内会に入ってください」とお願いされたりしているのではないでしょうか?
僕が自治会・町内会に関わり始めたのは結婚して借家ながらも所帯を持ち、子供が生まれて地域の活動に自然と関わるようになったのがきっかけです。当時住んでいたのは北海道の豪雪地帯でしたのでゴミステーションまわりの除雪当番、共同排雪など住民が協力して行わないといけないことが色々とありました。特に何の疑問も持たずに町内会に加入した記憶があります。
当時は町内会の運営を引っ張ってくれる方も60代の方が多く元気でした。僕のような30代そこそこの住民はお祭りの時の力仕事を手伝うだけで喜ばれたものです。ところが現在ではその状況は大きく変わってきているように感じます。自治会や町内会には入るべきなのか?入ったときのメリットは?入らないことのデメリットは?考えてみたいと思います。
自治会・町内会の現状は?
僕がはじめて町内会・自治会に関わったのは四半世紀前。当時は60歳になったらほとんどの勤め人は定年退職し余った時間を利用して地域の活動に関わるようになっていたと思います。ところが現在では定年は伸び、晩婚化が原因で60代になってもなお子供が学生という世帯も珍しくありません。町内会や自治会などの地域活動に関わる余裕がない方も多いように見受けられます。
また現役世代はどうかと言えば共働きが一般的となった現在では自治会や町内会で回ってくる「組長」や「班長」をやる時間がない。やりたくないという方が増えています。そもそも町内会や自治会という組織の考え方が昭和的で30代や40代の現役世代には馴染まないものとなっています。
そもそも自治会・町内会って?
そもそも自治会・町内会というのはどのような組織なのでしょうか?総務省のウェブサイトに参考資料として掲載されていますので紹介しましょう。
- 町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体
- 区域の住民相互の連絡、環境の整備、集会施設の維持管理等、良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行っている
簡単に言えば「良好な地域社会の維持及び形成に資する共同活動」を行う組織団体という事なのですが現状では昭和のままの自治会や町内会が存在し加入を半ば強制したりする地域があったりしてとても良好な地域社会のためになっているとは思えません。
自治会・町内会とマンション管理組合
自治会や町内会とよく似た組織団体で「マンションの管理組合」があります。この管理組合が自治会や町内会と同じような活動をしていたり、地域の自治会、町内会と協力し合って活動していたりとその地域、その団体によって状況は様々です。マンションの管理組合は建物とその敷地を管理することを目的に区分所有者全員で結成されている団体です。そのマンションに住んでいる、所有していることで管理組合の構成員となっています。
一方で自治会や町内会は任意加入の団体であるためマンションの住民には「管理組合に入っているから自治会には入らない」という誤解を招いているようなケースも見受けられます。そもそも自治会や町内会とマンションの管理組合は目的が異なるため「どちらに入っているから」という話とは別物です。
自治会・町内会 | マンション管理組合 | |
---|---|---|
会員構成 | 地域住民(任意) | 区分所有者(法律上全員が構成員) |
目的 | 住民相互の親睦・防犯・防災等の地域活動 | 建物・敷地等共有財産の維持管理 |
自治会や町内会の活動は?現状と問題点
自治会や町内会に加入していても実際どのような活動をしているのかは具体的にはよく分かりません。僕自身も自治会長を務めるまでは漠然としたものしかわかりませんでした。それは活動内容もですが自治会費として納めているお金の使い方についても同様です。まず、自治会や町内会がどのような活動をしているのかまとめてみました。
情報発信・情報共有
自治会や町内会の情報伝達手段でもある「回覧板」。昭和の象徴ともいえるような古典的な情報伝達方法ですが現在でも多くの自治会や町内会で活用されています。回覧板で伝えられる情報は大きく以下のような内容です。
- 自治会や町内会の行事の案内
- 周辺道路の工事情報、通行規制情報
- 保育園、小学校、中学校からのお知らせ
- 地域内の諸団体からの連絡
- 市行政からのお知らせ
回覧以外にも市広報の配布、その他行政からの配布物などを配布するのも自治会や町内会で行っています。これらの活動を行うと市から補助金が支給され自治会、町内会の運営に充てられています。
ゴミステーションの管理
よくトラブルになるのが「自治会や町内会に入っていないからゴミステーションを使えない」というお話。まぁそんなことはありませんが…ごみを収集するのは行政の仕事かもしれませんがゴミステーションを管理しているのは自治会や町内会です。カラスや獣にゴミを荒らされないようにステーションを造作したりしているのは自治会や町内会の負担で行っています。
交通安全・防犯のための活動
登校時の通学路の見守り活動や夜道のパトロール活動を行っている自治会や町内会も多く見られます。自治会や町内会で見守り活動、見回り活動を行うことで地域内の危険個所、通学路の危険個所を行政機関や学校などと情報共有することが出来ます。これらは大変地味で地道な活動ですがこの積み重ねがその地域の安心安全に大きく貢献していることは言うまでもありません。
自治会や町内会の運営が厳しい現在ではこのような交通安全・防犯のための活動の継続も危ぶまれています。「自己責任論」が幅を利かせる昨今ですが「自分の身を自分だけで守る」ことは不可能です。地域住民で協力し合い安心して暮らせる安全な地域づくりを目指すことは自治会や町内会活動の重要な役割です。
また。あまり知られていないことですが住宅街の防犯灯、これらの設置や電気代の管理はすべて自治会や町内会で行っています。電気代の一部は市の補助金が充てられていますがこれらの手続きも自治会や町内会を通しているからこそ実現していることです。
防災のための活動
年明けの能登半島地震をはじめこれまで各地で発生してきた自然災害において被災者支援のために自治会や町内会の役割は重要です。僕が会長を務めてきた自治会でも集会場への防災備蓄品を用意したりとイザというときのために出来ることから備えています。この地域は南海トラフの被害が大きくなると言われている地域ですが発災時にはすぐに支援は来ないと思っていた方がよさそうです。自治会費の中から少しずつ備えを進めています。
そして災害発生の時のための防災訓練、避難訓練も欠かせません。コロナ禍で防災訓練も行われなくなって地域も多いですが地震や水害はそれと関係なく発生します。個人個人の備えも重要ですが自治会や町内会での備えも大変重要です。またあまりよく知られていませんが住宅地や街角で見かける赤い箱に入った消火器、こちらも自治会や町内会で管理しています。当市では購入費の半額が補助されますが半額は自治会費で負担しています。
環境・資源回収活動
地域の中には公園があったり歩道に花壇があったりします。これらの管理を自治会や町内会で行っているところも多いようです。また、資源回収、廃品回収を自治会や町内会で行っているところもありその収益を自治会や町内会のために活用しています。ただ現在では様々な民間の回収業者がありそこにもっていってしまう住民も多いのが現状です。
僕が会長を務めた自治会では以前はアルミ缶の回収でかなりの収益があったようです。しかし現在は近所の大手酒屋がアルミ缶回収でポイントを付与するようになりアルミ缶の収益は半減してしまいました。
地域住民との親睦・交流活動
自治会や町内会では地域のお祭りやイベントを行って住民同士の親睦・交流活動を行っています。かつては神社やお寺のお祭りも自治会や町内会が一体となって行ってきていましたが近年は宗教的行事は自治会や町内会で行うことは相応しくないという流れから全く別のイベントとして行うところが殆どになってきています。
自治会や町内会に入るメリットは?
自治会や町内会に入るメリットは何と言っても地域住民同士の繋がりです。ご近所づきあいと自治会や町内会に入っているか入っていないかは関係ないというのが建前とは言え、お隣さんは自治会に加入していないから組長役はやらないし自治会費も払っていない。でも自治会内の様々なサービスの恩恵は受けている。とどうしても思われてしまいます。自治会や町内会に入っているとこんなメリットがあるよ。という事をまとめてみました。
地域や行政からの情報を得ることが出来る
自治会や町内会の昔からの情報伝達方法である「回覧板」これは何だかんだ言って現在でも有効です。地域の道路工事による交通規制情報や自治体から提供される支援、補助金、助成金などの情報に簡単に触れることが出来ます。回覧板が届き「どうせ大した内容はないよな」と思いつつパラパラめくると「あ!」と思うことも一度や二度ではありません。
今後、回覧板のデジタル化を進めることにより自治会や町内会に入っていなくてもこれらの情報にアクセスすることは容易になるかもしれませんが自治会や町内会があるからこそこれらの情報が提供されるという事は何ら変わりません。
地域住民同士のコミュニケーション
住民同士のコミュニケーションは何も自治会や町内会が無くても出来そうですがやはり範囲は狭くなります。自治会や町内会の役を引き受けることによっても様々なイベントに参加してかかわりを持つことでもコミュニケーションの範囲は大きく広がります。とくに異なる世代との交流は有益です。子育て家庭の方にとっては普段見守り活動をしてくれている高齢者と知り合ったり子供を介してしか知らなかった方と直接つながることが出来ます。この小さな積み重ねが強い自治会、町内会を作っていくのだと思います。地域に住む住民同士がお互いをよく知っているという事がその地域の安心と安全に繋がると思います。
自治会や町内会では夏祭りや秋まつりなどイベントを開催するところも多いですね。自治会や町内会に入っていなくてもこれらの行事に参加することは出来ると思います。ただ、子供のいる家庭に配られる「お菓子券」「ゲーム券」等が無料配布されない(購入は出来る)などのことはあると思います。それは仕方のないことかと思います。
災害時の助け合い
日本は改めて言うまでもなく災害の多い国です。今年の元旦にも能登半島で大きな地震災害がありました。災害時の救援はすぐには入ってくれません。入れないからです。ですから発災から数日間は自助、共助が試されます。また現実の話として公助が行き届く段階になった時、共助で開かれている一時避難所の体制が整っていないと限られた公助の支援は後回しにされていしまいます。
例えばある避難所にトラック3台分の支援物資が届くという連絡が入ったとします。しかしその避難所では駐車場の整理も出来ておらず連絡体制も整っていないと「搬入できるようになってから」と別の避難所にその支援は向かってしまいます。
このようにイザというときに住民同士が助け合い支えあえるのは普段からの自治会、町内会活動の積み重ねによるものではないかと思います。
自治会や町内会に入るデメリット
自治会や町内会に入ったときのデメリット、それが多くの方が「自治会に入りたくない」「町内会をやめたい」と思われている事柄なので改めて言うまでも無いとは思うのですが一応まとめておきましょう。
自治会費・町内会費が必要
自治会や町内会に入ることによるメリットの部分でも触れましたが自治会や町内会の運営には様々な経費が必要です。自治会費、町内会費はそれぞれ異なりますが月額百円から数百円の所が多いです。ただ、古い自治会や町内会では数千円というところもあるようでそういう自治会は会費の使い方に問題が隠れているかもしれません。
自治会や町内会を運営していくには様々な経費が必要です。市など行政からの補助金もありますがそもそも自治会、町内会が組織されていなければ補助金もありません。
- ゴミステーション設置のための経費
- 防犯灯の設置費用・電気代
- 街頭消火器の設置費用・交換費用
- 集会場・公民館の維持費用(電気代・上下水道代・修繕費等)
- イベント等の行事費
組長や班長が回ってくる
ほとんどの自治会や町内会が10世帯程度で「組」や「班」を構成しています。そして毎年順番に「班長」「組長」を回しています。そして「組長」や「班長」が回覧板を回したり自治会費や町内会費の集金をしたり様々な自治会や町内会のための仕事をします。10年に一度くらいなので仕方なくやる人が多いのですがこの「組長」や「班長」をやるのがイヤで自治会や町内会から抜ける人も多いです。
個人的には…自治会長までやらされた身としては「組長くらいええやん」と思ってしまいますが嫌だという人は本当に嫌みたいなので仕方ありません。
組長や班長をもう絶対にやりたくないから自治会や町内会を抜けるというのはちょっと短絡的な気がします。確かに任意の団体なので自由と言えば自由なのですが、その地域に住む住民が少しずつみんなで負担しながら運営しているのが自治会、町内会組織です。「お金払うだけ会員」というのを普通の会費プラスいくらかで検討してもいいかもしれませんね。
自治会や町内会に入らないとどうなる?
自治会や町内会への加入は任意です。ですから加入していても加入していなくてもその地域で生活することに何の制約を受けることもありません。ただ、仕方のないことに地域によっては自治会や町内会に入っていないことで様々な制約や住みづらさを感じるようなことがあるかもしれません。
ゴミステーションを使わせてもらえない
当自治会の隣の自治会ではゴミステーションは「組長宅前」と決められていてゴミステーションの管理は組長の仕事になっています。そうなるとその地域に住んでいるのに自治会に入っていない人はゴミを捨てにくく感じます。自治会に入っている人から見ても「あの人の家はゴミステーションになることは無いからズルい」と思われるのも仕方のないことです。自治会に入っていないことでゴミステーションが使えないことは違法と言った裁判判決も出ているようですが、その地域、現状によってその判断は大きく分かれることでしょう。
よく、「市民税を払ってるんだからゴミ収集サービスは使っていいはずだ!」という意見を耳にします。そうですよね。そう思います。ではふるさと納税で市民税を他の自治体に払ってる人はゴミ捨てちゃダメかしら?
ご近所同士の付き合いが少なくなる
自治会や町内会に入っていないと様々な行事やイベントへも参加し辛くなります。そのことで少しずつご近所同士の付き合いも少なくなっていくと考えられます。もちろんその人の性格だったりで何のお構いもなくお付き合いできる人もいると思いますが、やはりどこかで「浮いた存在」に見られても仕方のないことかもしれません。また災害時などにも何となく心細く感じたりするのではないかと想像します。
自治会や町内会に入る入らないの判断は?
自治会長を2年やってきて数世帯の方が自治会から抜けられました。転居によるもの以外の方は「もうすぐ組長が回ってくる」からという理由です。「仕事が忙しくて組長が出来ない。」「家族の介護があるから組長が出来ない。」
組長が出来るようになるまで次の人に回ってもらったらどうですか?
と提案しても、もうとにかく抜けたいの一点張りなので仕方ありません。あくまでも自治会や町内会は入るのも入らないのも自由ですから。ただ僕が見てきた中では入らない、入りたくない理由は「組長をやりたくない」「班長をやりたくない」が殆どです。少し冷静に考えてみたほうがいいのでは?とは思います。